杉は日本の固定種の針葉樹です。
総人工林面積約1000万haに対して45%を占め、日本国内で最も多く植林されています。
秋田・富山・三重・京都・奈良・高知の6府県の郷土を代表する県木に指定されるなど、身近な木であることが読み取れます。
杉の学名はクリプトメリアヤポニカ:Cryptomeria japonicaと付けられ、「隠された日本の財産」と言う意味になります。
ある時期までは、日本の山で育てられた木材は、持ち主にとって、名実ともに大切な財産でした。
ところが今では、海外から低コストで輸入される木材が一般的に流通するようになり、日本の木材は価格低下が続いていました。
木を木材として育てるための手間や費用を掛け、木を切り出して販売したとしても、その費用の方が高くついてしまい、日本の林業は立ち行かなくなってしまっているところが多く存在しています。
多くの山主さんにとって、先人達が後の自分たちのことを考え植えた木の価値が下がってしまったことは、大変悩ましいことでしょう。
2021年5月現在の日本では、アメリカからの木材の輸入がストップし、木材の価格が高騰する「ウッドショック」と呼ばれる事態に陥李、日本の木材に注目が集まっています。
しかし、木は出荷できる状態になるまでに、最低50年と言う長い年月を必要とします。
その間、良い木を育てるために密集した状態で植え、間伐を行い雑草を刈り、枝打ちを行い、また間伐を行う…といった手入れを行いながら育てます。
急な需要に対して直ぐに生産できる、と言うものではありません。
真っ直ぐ成長する杉の木は、材質として柔らかくて加工もしやすく、調温・調湿機能、芳香も良く、古くは縄文時代から家を建てる建築材をはじめ、広く利用されてきました。
奈良時代に建てられた正倉院は檜部材で作られ、校倉作りが有名ですが、宝物が悠久の時を経て美しさを保っているのは、建物の素材と造りに加えて、宝物本体が保存されている杉の唐櫃の機能によるものとされています。
杉の木材はオゾンや二酸化窒素など、宝物を劣化させる物質を吸着する機能を持っていることが近年明らかになったようです。
また、現代の建築に使用されている接着剤や防腐剤などに含まれるホルムアルデヒドによってシックハウス症候群などのアレルギー症状を発症することなどが知られていますが、杉の木材はそうした物質の吸着にも一役買うようです。
縄文時代や奈良時代には、現代のような科学文明はありませんが、人間の知恵として、非常に優れた木材であることを感じ取っていたのでしょうか。
杉は、木材として利用できるようになるまで最低でも50年はかかると言われ、簡単に育てて収穫し利用できるものではありませんが、生活のパートナーとして、長く一緒に連れそうには、最高の木材の一つなのかもしれません。
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